【プレスリリース】革新的医療技術を開発するスタートアップへの支援開始 -日本の創薬エコシステムの強化に貢献-
発表のポイント
■ 国立がん研究センター橋渡し研究推進センター(CPOT)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による「橋渡し研究プログラム(大学発医療系スタートアップ支援プログラム)」に採択されました。
■ 本支援プログラムでは、全国から広く医療系スタートアップを公募し、開発段階に応じた研究費の補助、プロジェクトマネージャーによる伴走支援、スタートアップを創出する「カンパニークリエーション*1」事業、「起業家レジデント」制度によるCXO人材*2育成、海外展開支援等を通じて、日本のスタートアップエコシステム*3に資する活動を行ってまいります。
■ CPOTは、がん医療の未来を創造する医療系スタートアップ支援拠点として、日本発のスタートアップの成長を、基礎研究への再投資につなげる好循環を生み出すことを目指します。
概要
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区、以下国立がん研究センター)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が公募する「橋渡し研究プログラム(大学発医療系スタートアップ支援プログラム)」に「サイエンスでがん医療の未来を創造する大学発医療系スタートアップ支援拠点」に採択されました。
本プログラムでは、国立がん研究センター橋渡し研究推進センター(センター長:土原一哉、以下CPOT)を中心に、「National Cancer Center Venture Incubation Program」におけるスタートアップ支援の取り組みを拡張し、日本でがんの革新的医療技術を開発するスタートアップに対する支援を開始します。公募によって選定されたスタートアップおよびスタートアップを設立しようとしている研究者に対して、各開発ステージに応じた開発費用の配分に加えて、プロジェクトマネージャーによる伴走支援、各種専門家によるコンサルティング、教育プログラムの提供等を行うとともに、スタートアップを創出するための「カンパニークリエーション」、若手研究者をCXO人材として育成する「起業家レジデント」、海外市場での資金調達や事業展開を支援する取り組みなどを併せて行います。
これらの取り組みを通じて、日本の医療系スタートアップ創出のためのエコシステムを強化し、基礎研究の成果を元に革新的な医療技術を開発するスタートアップを育成し、それらが成功することで基礎研究への再投資につながる好循環を生み出すことを目指します。
背景
「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議*4」等でも繰り返し指摘されているように、創薬の主役は製薬企業からスタートアップを含む新興バイオ医薬品企業(Emerging Biopharma:EBP)*5に移りつつあります(全世界Phase I試験、EBP主導66% vs.大手製薬主導23%:IQVIA Global Trends in R&D 2024より)。これらEBPは、Venture Capital(VC)やスタートアップを支援するインキュベーターなどから成るスタートアップエコシステムにて米国を中心に生み出されており、VC自らスタートアップを作り出すカンパニークリエーションモデル(Modelna社など)などダイナミックに進化しています。
日本においても、近年VCが数多く設立され投資額は増加するなどエコシステムは構築されつつありますが、バイオベンチャーの株価は低迷(過去2年間で平均-47%)しており、基礎研究からスタートアップが生まれ、実用化で得た資金が基礎研究に再投資されるという好循環を生み出せておりません。
取り組みの詳細
CPOTを中心に、経営面を支える国内トップクラスのVC、インキュベーションラボなどを運営する事業会社、広報・イベントを支援する団体、製造・品質管理などを受託するCRO/CDMOなどから成る連携プラットフォーム、海外展開を支援する機構、海外での会社設立・ビジネス展開を支援する海外拠点などが連携するスタートアップ支援拠点を構築します。
この拠点の中では、CXO人材を育成する起業家レジデント制度(Entrepreneur In Residence)、アンメットメディカルニーズに基づくシーズ育成(カンパニークリエーション)、グローバルでの資金調達・ビジネス展開を行うための支援機能の構築を行います。
支援シーズの選定・ステージゲート評価*6では、製薬企業経験者やVC等によるバックキャスト型*7の評価を取り入れるとともに、トップレベルの臨床研究者・基礎研究者によるアンメットメディカルニーズを解決するためのサイエンスの視点からの評価も重要視します。支援シーズ・伴走するプロジェクトマネージャーを支援するために各ステークホルダーが意見交換を行うアドバイザリーボードを組織し、質の高い伴走支援を実現してまいります。
展望
これらの取り組みにより、医療系スタートアップエコシステムを強化し、基礎研究からスタートアップが生まれ、実用化で得た資金が基礎研究に再投資されるという好循環を生み出し、日本の創薬力を強化したいと考えております。また、がん領域のハイボリュームセンターという国立がん研究センターの特色を生かし、がん関連領域に特化する代わりに全国のスタートアップを広く支援可能な体制を構築してまいります。
用語解説
*1 カンパニークリエーション
Venture Capital(VC)が自ら製品アイデアを創出から事業計画を立案し、ラボでの実験を含めて事業としての評価を行う取り組みです。
*2 CXO人材
Chief Executive Officerなどの経営における中核を担う人材のことです。
*3 スタートアップエコシステム
生態系の意味より、スタートアップを経営していく上で必要となる支援体制などスタートアップを取り巻く環境のことです。
*4 創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議
ドラッグロスの発生や医薬品の安定供給等の課題に対応し、国民に最新の医薬品を迅速に届けることができるようにするため、医薬品へのアクセスの確保、創薬力の強化に向けた検討を行う会議です。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/souyakuryoku/index.html
*5 新興バイオ医薬品企業(Emerging Biopharma:EBP)
スタートアップとして起業されて製薬企業となった会社のことです。モデルナ社など欧米で多く出現し、創薬の中心を担いつつあります。
*6 ステージゲート評価
創薬開発の段階が次の段階に進んで良いかどうかの評価のことです。
*7 バックキャスト型
最終的な製品やゴールから逆算的に開発計画などを立案する方法です。
■ 国立がん研究センターHP内 プレスリリースページはこちら
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2024/0925/index.html